ストラングラーズ・最新ライヴレポート 
2019年3月25日・英国ボーンマス・O2 ACADEMY


3月25日・イングランド南西部の海沿いの美しいリゾートタウン、ボーンマスでのライヴ。3月一杯をかけて行われた”BACK ON THE TRACKS”UKツアーもいよいよ大詰めだ。

開場約1時間前の夕方6:00すぎに、会場のO2 ACADEMY前に到着。だが、ストラングラーズの公演案内も出されておらず、数人のファンが並んでいるだけ。本当に会場ここでいいの?こんなんで大丈夫か、お客さん沢山来るのだろうか、と思ったが、7:00前にやっと急に行列も増えだした。この辺は、日本のライブと事情が違うみたい。入口では厳重なセキュリティチェックを受け(理由は見当つくが)、内部に入る。

大きさは、川崎のクラブチッタくらいか。あっという間に場内が一杯に埋まりだしたが、ストラングラーズUKツアーのハコとしては、これでも小さい方らしい。バンドメンバーにとっては本番前の大事な待機時間ではあるが、バックステージで4人のメンバーや関係者にあいさつさせて頂いた。

オープニングアクトは、ドクター・フィールグッド。名曲「ダウン・バイ・ザ・ジェティ」や、昨年ウイルコ・ジョンソンの来日公演でも聴けた「ログゼット」「バック・イン・ザ・ナイト」などが、小気味よく演奏されていた。
 
 

9:00すぎ、いよいよストラングラーズの登場。舞台背景には、廃墟の内部をイメージさせるようなビジュアルが設置され、右上部にNO MORE HEROESの文字も見える。
(※この夜の背景や演奏写真に良く撮れたものがなかったため、SIS JAPANさんよりご提供いただいた同時期の別公演の写真をアップしております)
ワルツ・イン・ブラックが流れ、大歓声に包まれながらメンバーが入場、いよいよだ!

ストラングラーズのライヴはまさに生き物だ。おなじみの曲であっても、過去の物差しをあてはめてかからない方がいい。同じ曲が、根本的なスピリットはそのままに、その時々の方法論に合わせて、進化した形で演奏されるからだ。過去のライヴ盤でも、「X‐CERTS」であれば、ファーストやセカンドからの曲が、「ブラック&ホワイト」のようなヘヴィネスを突き詰めた、一段と重い音に変貌していた。また、「All Day & All Of The Night」であれば、「オーラル・スカラプチャーズ」や「ドリームタイム」に見られる、芸術性の高い独特の美意識が透過され、スタンダードなナンバーに新しい魅力をもたらしていた。

さて、この夜のオープニングは”TANK”。ブラック&ホワイトのオープニング曲であり、このアルバムの2016完全再現ライヴツアーを経て、よりアンサンブルが鍛えこまれている。これからの展開に、胸が高鳴る。

続いては、”I’VE BEEN WILD”。アルバム「ノーフォーク・コースト」の4曲目だが、なぜ今まで実演があまりなかったのか不思議なくらいの、ノリの良いグッドチューン。構成が若干変更され、サビの部分がイントロに続けて歌われるなどの工夫も見られる。

そして、おなじみの”GRIP”で一段と盛り上がった後に小休止。ここで、観客から期せずして、”ハッピー・バースデ~・トゥユー♪”の大合唱が沸き起こる。そう、今日がバズ・ワーンのお誕生日であることは、みんな良く知っている!!アットホームな雰囲気が会場を包んでいった。

サイケデリックなナンバー”BAROQUE BORDELO”も、アルバムの原曲よりもヘヴィネスが増している。続いては”BRING ON THE NUBILES”。原曲ではヒューの存在感が際立っているが、もはやバズのオーラは原曲に全くひけを取らないヴィヴィドさを持っており、全く違和感がない。さすがだ。

続いては、”UPTOWN”。名盤「オーラル・スカラプチャーズ」B面のトップ曲。最初、どこかで聴いた曲だなぁ、何の曲だったっけ?と思ってしまったが、やっと途中でわかった!あのアップタウンだ!バズのソリッドなエレクトリック・ギターとジャン・ジャックの重さを増したベース、デイヴの高らかなキーボード、ジムのタイトなドラムは、この曲を新しい次元へと生まれ変わらせた!
いまだに、「今のストラングラーズはヒューがいないから・・・」と思っている人達にこそ、このUPTOWNを聴いて欲しい!格調高い原曲も素晴らしいが、今夜のより堅牢なバージョンは、さらに素晴らしいと思った。(もちろん個人的には、ヒューの過去の業績も現在の活動も、充分にリスペクトしているつもり)。

次は、”RELENTLESS”だ。”SUITE 16”に収録された、名曲中の名曲。この曲をこそ、ストラングラーズの最高傑作にあげるファンもいることだろう。来日公演でもぜひ聴きたい曲。

そして、あの”PEACHESS”。 やはり原曲ではヒューの存在感が強烈なナンバーで、彼の脱退後、ストラングラーズはしばらく、この曲のライヴを封印していたらしい。だが今のストラングラーズに、そのようなためらいは、もはや全く必要ないだろう。

ツアー途中からセット入りした”TIME TO DIE”は、アルバム”IN THE NIGHT”のオープニング曲。この曲も、最初何の曲かわからなかった。演奏がブラッシュアップされているからね。元々かなり聴きごたえのある曲だが、さらに素晴らしい。ヴォーカル(語り)は、ジャン・ジャック・バーネル。

ここで、新曲”THE LAST MAN ON THE MOON”が披露される。ストラングラーズ特有の哀愁感を帯びたハーモニーと不思議な浮遊感覚を併せ持つ、新しいテイストの曲だ。来るべき新譜で、この曲を聴ける日が待たれる。

続いては”DUCHESS”。ヒット曲のひとつであり、観客からも合唱が沸き起こる。デイヴ・グリーンフィールドが素早く分散和音をこなしながら、余裕タップリにビールをグイっとやる仕草も健在。

次は”UNBROKEN”。原曲にはない、デイヴのキーボードがスペーシーな感覚をもたらしており、なおかつアンサンブル全体の骨組みがガッチリと決まっている。アルバムの原曲よりも、また同曲のサマーソニックでの披露時よりも、さらに進化していると言っていいだろう。

ここで新曲”WATER”。新曲とはいっても、昨年のツアーから既に披露されているナンバー。題名からも連想されるように、まるで水の中にいるかのような不思議な浮遊感覚がある。さきほどの新曲”MOON”もそうだが、このあたりの感覚がストラングラーズの新要素なのかも知れない。

そこから時代を遡り、ファーストからの”PRINCESS OF THE STREET”へ。ブルージーな曲だが、オリジナルよりも音数を大幅に削ぎ落して絞っており、なおかつ,よりエモーショナルだ。自分なりにある程度予想してきたつもりであっても、こうして今までの既成概念がどんどん取っ払われていくのがわかる。

そして、あの”ICE QUEEN”!いわずと知れた、「オーラル・スカラプチャーズ」のオープニングナンバーで、この曲を再び取り上げたことこそ、今のストラングラーズの自信を充分に感じさせる。UPTOWN同様、原曲よりもヘヴィネスが増しており、やはり骨組みがガッチリとしている。原曲のホーンセクションの音も、ちゃんとリカバーされていた。

ストラングラーズ最大のヒット曲”GOLDEN BROWN”でムードを高め、さらに “ALWAYS THE SUN”では、場内大盛り上がりで大合唱。続く “THE RAVEN”も、同じアルバム収録の”BAROQUE BORDELO”同様、よりハードな演奏となっている。

この夜3つ目の新曲は、“THIS SONG”。どうやらカバー曲らしいが、ソリッドなテイストとドラマチックな展開を見せるナンバー。この曲も、新譜での披露が大いに期待される。
なお、ジャン・ジャックはインタビューで、新曲はいきなりレコーディングする前に、まずライヴでの手ごたえをつかんで、そこから、さらに改良していくという趣旨の発言をしている。新譜では、演奏が大幅にイメージチェンジすることも、充分にあり得るだろう。
     
そして、“5 MINUTES”と、“SOMETHING BETTER CHANGE”!ここでは、ジャン・ジャックの凄みいまだ健在なり!とだけ書いておこう。5 MINUTESスタジオ曲ラストでは、時計針の音が入っているが、ジム・マッコーリーがここをスネアのリムショットで表現するなど、配慮が細かい。そこから、ブラック&ホワイトからの”RISE OF THE ROBOTS”へとつなげ、最高潮のクライマックスで”DOWN IN THE SEWER”!

 
SEWERはファン実施のストラングラーズ全曲人気投票で、堂々の1位に輝いた大曲。これまた、原曲よりも音の奥行きがぐっと拡がりしかもノリが良い!バックスクリーンには、”RATTUS NORVEGICUS”の文字が浮かび上がり、さらにインストの中間部では、JJとバズがダックウオークをキメ、否が応でも興奮を高めていく!大団円を経てメンバー退場。

アンコールの要求の仕方は、日本とこちらではちょっと違う。拍手はあまりなくて、歓声と口笛がそこかしこに飛び交っている。そして徐々に、手拍子と足踏みが盛り上がって大歓声となる。

ここで個人的状況の話ですみませんが、大盛り上がりの今頃になって、まだ自分が夕食を食べていないことに気がついた・・・。ストラングラーズの最新のパフォーマンスを確かめなきゃ、メンバーにあいさつもしたいし、英国到着当日での会場への移動やらなんやらで、食事のことが頭からすっかり抜けていた!マズい・・・もう11時近いよ・・・空腹でフラフラだ。もしその辺に誰かの食べ残しでも落ちていたら、思わず拾って口にしてしまったかも知れない(笑)。なんとか気合を入れなおしてアンコールに臨もう!

さて、アンコール1曲目は”WALK ON BY”。ディオンヌ・ワーウィック(作曲バート・バカラック)のカバー曲だが、やや60’Sテイスト寄りのスタジオバーションに比べ、今のストラングラーズを体現した、よりハードな演奏だったのが印象的。

そして、JJが拳をベースの弦に叩きつける。言わずと知れた、”NO MORE HEROES”のはじまりだ!演奏の素晴らしさと盛り上がりは言うまでもなく、ぜひ来日公演で確かめていただきたい。

多少前述の表現とカブるが、自分なりにこの夜のライヴを総括しておこう。
バンドのアンサンブル全体に、音がより重くなっており、重心がしっかりしている。それでなおかつ、スペーシーな拡がりが、さりげなくもたらされている。いわば、音のランドスケープが拡大して、より見晴らしが良くなっている状態だ。この進化にはいくつか理由があるだろう。各メンバーの努力と工夫はもちろん、ドラムのジム・マッコーリーが、よりストラングラーとしての存在感を高めJJとのリズムコンビネーションが密に取れていること(ジムはジェット・ブラックからのアドバイスを受けているようだ)。
そして、メンバーが信頼を寄せる音響、照明のスタッフの人達の影のサポートだ。ありがたくも、本番中のコンソールピットに入れていただいたのだが、各スタッフが全ての曲の構成を熟知しているようで、細かなオペレーションを加えているのが見える。彼らは、来るべき来日公演でも素晴らしい仕事をしてくれるに違いない。

かってストラングラーズと共演したこともあるロバート・フリップは、キング・クリムゾンのライヴに際して「すべての曲は新曲だ。それがいつ書かれたとしても」とバンドに指示を出している。まさに、この言葉を体現し続けているのがストラングラーズだろう。繰り返すが、過去の既成概念を当てはめようとするとイタイ目に遭う。今のバンドのコンディションを観た上であっても、11月の来日公演で、さらなる驚きが待っていることも充分にあり得る。
   
  
そう、ストラングラーズは今でも進化し続けている!!
     
         

     
※上記セットリストシートには、アンコールでHANGINGが入っていますが、この日は演奏されなかったはずです(空腹による自分の記憶違いでなければ)。翌日ブライトンのライヴではWALK ON BYと入れ替えて演奏されました。

 

 

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